lead night

95年に上京する前は数年間九州に住んでいた。


当時若かったこともあり物理的、精神的な閉塞感にイラだったり、落ち込んだりして周囲に迷惑をかけることも多々あった。


今振りかえると「思い出補正」もありイイ時代だったなあと思えるが当時は俺は世界で1番不幸じゃねえのかと運命を呪ったりした。


仕事を終え、家賃滞納しまくりのアパートに戻ると自己嫌悪に苛まされた。


感情の起伏の激しい俺は冬になると特にダウナーになった。


部屋のエアコンは壊れコタツを買う金もない。


それで寒い季節は車のエアコンで暖をとった。


東京と違い地方は車がないと仕事にならないので手放してなかった。


家にいるとネガティブ思考の嵐に襲われるので会費の安い近所のクレイコートでテニスをしまくって憂さを一時的に晴らした。


人は不遇なとき不遇を乗り越えスターになった人物を自分に重ね合わせる。


当時の俺は片山右京に魅かれていた。



90年代前半はF1の雑誌がたくさん創刊されていた。




俺が右京に興味をもったのはF3000時代、星野一義、ロス・チーバー、黒澤琢弥らと熾烈な闘いをしてた頃だ。



フランス時代、車の性能が他チームに劣るのでカーブでギリギリまでブレキングしない攻撃的な走りで「カミカゼ・ウキョウ」と称されたエピソードもかっこいいと思った。


フランス時代の貧乏話など栄光をつかむ前のイントロダクションみたいで映画みたいじゃんと憧れた。



F1デビュー後も右京の自伝「片山右京STORY」やビデオも買った。



上京後、環境の急激な変化や忙しさで以前ほどの右京に対するパッションは低下したが常に動向はcheckしていた。



右京のすごいのは一言で言うと「行動力」だ。


フランスで武者修行しようと決意し、パスポートもないのに50万をカバンに入れ空港に行き


「フランスまで大人1枚」


と言ったのは有名な話だ。



人生を山に例える人は多い。



その山で人生の試練に遭遇し十字架を背負った右京。



仲間2人を断腸の思いで別れ下山した右京はよくインタビューに答えたと思う。



「今回の登山を振り返っていかかですか?」



と質問したバカインタビュアーには殺意をおぼえた。


国分太一かよ。



90年代当初から半ばにかけてテニス、プロレス(主にU系)、サッカー、深夜のドライブ、パチスロなどに熱中したが右京を見ると当時のことが喚起されなんともいえない気持ちになる。



フランス時代の右京




F1デビュー時の右京